文句を言いながらも、棚橋くんと新田くんがやってくる。


どんな男子でも平気で喋りかける、響子の特技かもしれない。


「しりとりなんて、ガキじゃねーんだし」


クラスでいえば、どちらかというとヤンキーぽい棚橋悠馬は、学生服もあちこちいじってある。


「それが、クリアすると得するやつなんだよね。新田もやるでしょ?」


「えっ、ああ、どうする?」


新田くんが、気乗りしない様子の棚橋くんに尋ねる。


私は心の中で祈った。


どうか、しりとりゲームに参加しますように__。


「得するって?」と棚橋くんが興味を持ったようだ。


「しりとりゲームをクリアすれば、ポイントが貰えて色んな物に交換できたりするの」


「物ってなんだよ?」


「別にやりたくないならいいわよ、他のやつ誘うから」


急に態度を変えた響子は、再び教室内を見回す。


「んだよ、やりゃいいんだろ!」


「じゃ、2人参加ね。あと1人いるんだけど__?」


「あいつでいいんじゃね?」


棚橋くんが言う【あいつ】とは、まだチャイムも鳴っていないのに、参考書にかじりついている名倉賢太(なぐらけんた)のことだ。


なにかにつけて、私たちは賢太のことをイジっている。


「おい、ガリ勉!こっち来いよ!」


棚橋くんに呼ばれ、ビクッと体を震わせた賢太が渋々やってくる。


「よし。これで始められる!」