施無畏印(せむいいん)与願印(よがんいん)という片手を上げ、片手を下げたよく見るポーズをとった千紘が自分の名を呼ぶ。

 なんと美しい仏様だ、とひれ伏しそうになる。

「……しょうがない奴だな。
 夏とはいえ、風邪ひくぞ」

 そう千紘様は言うと、そうっと真昼をテーブルの下から引っ張り出し、抱き上げた。

 こ、これは世に言う、お姫様抱っこではっ。

 全部外す占いも初めてだったが、お姫様抱っこも初めてだっ。

 このとき、かなり目が覚めてはいたのだが、こんな貴重な体験の最中に降ろされたくないっと思った真昼は、そのまま狸寝入りをした。

「……重いな」

 すみません。

「うん、……重いな」

 繰り返さないでください、と思ったのだが、千紘が何故か嬉しそうなのに気がついた。

 私の愛も体重も重いかもしれませんが、逃げ出さないでください、千紘様……と思っているうちに、ふかふかのベッドに降ろされたので、そのまま本当に寝た。