あれから、二年の月日が流れた。


「円香ちゃん、次の時間空いてる?」


私は由実さんと同じ大学に通っていた。


一限が終わって図書室に行こうとしていたところ、偶然すれ違った。


「はい、空いていますよ」
「よかった。瑞希がね、円香ちゃんに話があるんだって」


瑞希さんは高校卒業後、就職したと聞いた。
会うのは二年ぶりだ。


「まあ、久々にラーメンでも行こうって、違うことで盛り上がってるみたいだけどね」


由実さんはスマホの画面を見せてくれる。
そこには瑞希さんとのメッセージのやり取りが表示されている。


「私も次空いてるから、一緒に行こ」


そして私たちは瑞希さんが指定したラーメン店に向かった。
瑞希さんはまだ来ていなかったらしく、四人席に座って瑞希さんを待つ。


「そうだ、聞きたいことがあったんだった」


由実さんはメニュー表から顔を上げる。


「円香ちゃんって本物のお嬢様なの?」


予想外の質問で、水を飲んでいた私はむせてしまった。


「ど、どうして……?」
「いろんな人に言われたんだよね。小野寺円香はお嬢様なんじゃないかって」


大学ともなれば、私のことを知っている人はいるだろうと思っていたが、まさかそれが由実さんの耳に入るとは思っていなかった。