女が角を曲がり、ようやく息を吸えた気がした


俺…久しぶりに震えた
心臓の音もうるさい


「……朔、いいか?」


ついて来てくれと、あの女の家とは反対方向に歩き出した。

泉の顔からは気持ちは読み取れない。

もしかして、誰かがあいつらを殴った後に、そこにちょうどあの女が来たのか?

……
ちがう。そんな訳ない。

だって普通の女じゃ、あんな中で立ってられるわけがない。


手に血が付いてるのは見えた。あれはあの女の血ではなくて……黒蛇のやつの血だ


頬の血は返り血


夕陽に照らされて逆光の中たたずむ女を、綺麗だと思ってしまった自分がいた


「泉、どこに行くんだ?」

「…新のところ。さっき見たことは、誰にも言うなよ」


「は?今のを…か?」


いやいや、こんなの見せつけられて心の中に留めておけと?じゃあなんで今から新の所に行くんだよ

黙ってついてこいと言わんばかりの泉にイライラが募る


「待てよ!なんでそんな冷静なんだよ!なんでアレかを見てお前はいつも通りでいれるんだよ!!!」


なんで…