【全巻完結】愛は惜しみなく与う①

そして、隣の席の椅子を引く音がした

薄っすら目を開くと、杏はこちらに顔を向けて目を閉じていた

寝たの?


じーっと少し待っていると、スースーと小さな寝息が聞こえた



早!



そして恐る恐る目を開けた俺の声は、静かな教室に虚しく響いた



「今のなんだよ」



杏はボディタッチは激しい
でもそれは、なんというか…下心がなく、むしろ友情を感じるボディタッチだ



だから、何も思わないけど


でも今のはなんだか、違うような…


って期待してる自分がバカらしい


少し熱くなった顔がおさまってくる。人のことドキドキさせておいて、当の本人は、秒殺で寝た


なんだったんだよ


そう聞いてもきっと、杏は答えてくれない



力になりたくても、東堂財閥と聞くと、俺はちっぽけな存在だ

何もできない。むしろ家のことが絡むのであれば、俺なんていてもいなくても、変わらない存在だ



でも、杏のためなら力になりたいと思う



「なんで一人で抱えるかなぁ…」



眠る杏の髪を少し掬い、杏を眺めていた