【全巻完結】愛は惜しみなく与う①


足に力が入らなくなり膝から崩れる


女が視界に居るだけで呼吸ができない


ヒューヒューと喉がなり苦しくなる


息ができない


泉に繋がったのか、携帯から、どうした?と言う泉の大きな声が漏れる


ごめん、泉、俺やっぱり




「響くんは、私のオモチャでしょ?」




異様に赤い唇がそう言う



俺やっぱり怖いや



ゆっくり女が近づいてくるが、逃げもできない。指先1つ動かない


ただ呼吸ができないだけ


目を瞑りたいのに、目蓋さえ動かせない



こわい

やめてくれ

もうあの血を思い出したくない


俺にも大事な仲間ができたんだ


俺にも恩返しさせてくれよ


なんで何も……できないんだよ


もう諦めかけたその時




俺の視界に、小さな背中が現れた


俺と女の間にスッと立ったのは



杏だった



遮られて呼吸が少し戻る




「あ、杏…」



「なんや?」



「そ、そいつが…俺の…」





そして明るい声とは違い、地を這うような低い声を出した



「お前か、響をこんな風にしたんは」