なのに…

アルフは私を振り返って、首を振った。

私が窓の下を覗くと、そこには、5〜6人の兵士の姿があった。

もう逃げ場がない。

アルフは、私の肩をぎゅっと抱いた。


ノックが止んだ扉からは、ガチャッと鍵を開ける音が聞こえた。

扉が開いて、そちらからも5人ほどの兵士が部屋に雪崩れ込んできた。

「アルフレート王弟殿下、フロレンティーナ
王女殿下誘拐の罪で逮捕致します。」

中佐の階級章を肩に付けた先頭の男がそう言い放ち、後ろに続く男達がアルフのもとへ駆け寄ってくる。

「馬鹿なことを…
どこにフルーナがいるんだ?
俺はフルーナを連れ出したりしていない。」

アルフは落ち着いてそう言うけれど…

「我々には分かりかねます。
申し開きは、裁判でお願いします。
我々は、アルフレート王弟殿下をお連れせよ
との命令を遂行するのが任務ですので。」

「待って!
アルフは悪くないわ。
私が勝手について来たのよ。
それに、私は王女殿下じゃない。
クリスティアーネ・ディートリンデ・
フォン・ミュラー、亡き男爵リヒャルト・
フォン・ミュラーの娘よ。
ほら、髪の色だって違うでしょ?」

私は必死に訴える。

けれど、全く聞き入れてはもらえず、アルフは連れていかれてしまった。