希空~空姫に希望を。~


「シイナ、名字教えてくんねぇ?」



「…なんで」


「えーっと、親御さんが捜してるかもしれないから?」


「安否すらわからないのはさすがに、ね」



オレと諷賀で名字を聞き出そうとしたけれど、シイナは頑なに口を開こうとしなかった。


言えない理由も聞いてみたけど、やっぱりそれも答えない。




「なんで言わねぇんだろ」


「連れ戻されると思ってるんじゃない?」


「あーー…」


んなことしねぇのに。



「本当に教えてくんねぇの?」


オレはシイナが座っている目の前にしゃがんで目を合わせる。



出会った時と変わらず闇に染まったままの瞳は、何も教えてくれそうにない。




「…わかった。

 悪かったな、嫌なこと聞いて。

 もう聞かねぇから。なっ」


シイナの頭にぽんっと手を置いて軽く髪を撫でる。



やべ。無意識に触っちまった。


嫌がられたんじゃ…。



そう思ったけど、シイナは少し口角を上げていた。




「…ありがと、響介」



「え」


「…調も響介もいい人」


ぽつりとつぶやくように言うシイナ。




やばいっ…。これは嬉し過ぎる…!


胸をぎゅっと鷲掴みされたみてぇだ。


あ、喧嘩中に胸ぐら掴まれるのとは違うぜ。



これはなんつーかこう…、嫌じゃない苦しみっつーか…。


くそっ…、心臓がうるせぇ。





「…もっとシイナに頼ってもらえるように頑張るな」



オレは自分の胸の高鳴りを無理矢理隠して、もう一度髪を撫でたのだった。