ママの手料理

「っ…………」


その途端、私の視界がぐらぐらと揺れて。


「こんな所で独りで居るなんて、僕が居なかったら紫苑さん明日の朝には凍死してましたよ絶対。僕の部屋に来て下さい」


視界が揺れた原因が私の涙のせいなのか、彼に持ち上げられたからなのか理解するのに少しだけ時間が掛かった。



「はい、着きました。…一旦ベッドに座りましょう」


私の事を軽々と抱き上げた航海は、そのまま私を自分の部屋ー私の隣の部屋だーに連れて行ってくれた。


涙のせいもあって視界が悪く、足元がおぼつかない私を優しくベッドの上に座らせてくれて、私の膝の上に毛布を掛けてくれる。


「僕、トイレに行きたいので行ってきますね。ついでに飲み物持ってきますけど、紅茶とココアどっちがいいですか?」


意志と関係なしに震え続ける私の手を軽く握りながら、彼は安心させる様にそう言ってくれるけれど。


正直、今1人になりたくない。


「…大丈夫、何もいらない」


「温かいの飲むと落ち着きますよ?…取り敢えず、トイレ行ってきますね」


私の手を軽くさすった彼は、踵を返してドアへと向かった。


(違う、そうじゃなくて)


そっと視線を彼から外した私は、


「トイレって後でじゃ駄目なの、?」


そっと小声で尋ねた。