ママの手料理

過呼吸を起こしそうな程1人でパニックに陥って、私がその場にうずくまって涙を流しながらガタガタと震えていると。



「………あれ、何やってるんですか?」


近くから、誰かー私に敬語を使う人は航海しかいないから航海だーの声がした。


「っ、…………」


「トイレはあっちですよ」


しゃがみ込んだまま動かない私を見てトイレに行きたいのだと勘違いしたのか、私の真上から降ってくる声は眠そうに説明してくる。


(…違っ、)


トイレの場所は分かる。


けれど、寒くて暗い此処で震えているだけで今は声も出せない私は、彼の言葉を聞く事しか出来なくて。


「え、もしかして寝てるんですか?こんな暗くて寒い所で…」


全く、僕が見つけなかったら凍死してますよ…、とか何とか言いながら、私が寝ていると勘違いしている彼はその冷たい手で私の顔を触って。


くいっと、私の顔を上にあげた。


「っ………」


急にスマホのライトが目に入ってきて、私は少しだけ顔を歪めた。


そのせいで、目元に溜まっていた涙がまた溢れる。


光のせいで航海の姿は見えないけれど、彼からは私がはっきりと見える様で。



「…そうやって独りで泣かないで下さい」



次の瞬間、私と同じ目の高さまでしゃがみ込んだ、パジャマなのにサングラスを掛けた変な姿の航海は、私の事をそっと抱き締めた。