ママの手料理

その瞬間。


「丸谷、紫苑…………!?」


伊織さんが、驚いた様に目を見開いて私の名前を繰り返した。


それはまるで、私の名前に聞き覚えがあるかの様で。


(…?)


予想外の反応に私が戸惑ったのもつかの間、


「紫苑ちゃんっていうの?可愛い名前だね!…その、ご家族の事は本当にご愁傷さまです。…まあでも、此処に来たからにはもう大丈夫!此処では迷子は全員家族だからね!」


親が居ない人なんて此処には沢山居るからー、と、先程までの表情は何処へやら、笑顔で彼はフォローらしからぬフォローをした。


もちろん、


「親が居なくても生きていけるので大丈夫ですよ、心配する事は何もありません」


「悲しむより先に、新しく家族を作ったもん勝ちだからね」


航海や大也さんも、彼の言葉に付け加える様に発言した。





夜中。


『うひひひ僕の可愛い可愛いママンとパパンは何処ぉー?』


『お前ら黙ってさっさと殺っちまえよ』


『僕1人殺したぁ』


『女、で良いんだよな、殺す奴』



私は、夢を見ていた。


見知らぬ男の人の声が聞こえてきて、私はクローゼットの中でガタガタ震えていて。


お母さんの数を数える声と、幼い兄弟達の叫び声が重なって聞こえる。