ママの手料理

「待って何言えばいいの?名前と年齢と役割と生い立ちとその他?……はい、俺の名前は早川 伊織(はやかわ いおり)です、歳は19歳、若いねー俺って!」


私に向かって笑顔で親指を立ててみせた彼は、


「役割は、近所のお兄さん!」


と笑顔で言葉を続け、


「何言ってんだ、近所のホームレスだろ」


「お兄さんとか訳分からない事言わないでもらえる?お兄さんはこの僕ね」


等と、多数のブーイングを受けていた。


「うるさい黙って皆!」


そのブーイングに対して目を吊り上げて頬を膨らました彼ー伊織さんーは、次の瞬間笑顔で私の方に向き直って、


「俺の特徴は人の名前を覚えるのが苦手な事で、生い立ちは、……そんなのどうでもいいよね!今は大学中退して、隣の“パパの手料理”っていうお店の店長やってるよ!仁も働いてるからいつでも来てね!」


と、お店の宣伝を始めた。



因みに、ママの料理店とパパの料理店の名前の意味は特に無くて、湊さんがノリで付けたらしい。



「あ、…じゃあ今度行きます」


私がそう言うと、


「そう来なくちゃ!あ、ちなみに君の名前は?」


まるで大也さんの様に笑顔を絶やさず、彼は私に問うた。


「私は丸谷 紫苑です。歳は15歳で、色々あって私以外の家族が、その…亡くなったというか殺されたというか、それで、短期間ですが一応ここの家族になります……?」