ママの手料理

その視線は私とぶつかり合うことなく、結局彼の目はブルーライトカット眼鏡を付けてパソコンのキーボードを打ち続けていた銀河さんとぶち当たった。


「おいお前何処行ってたんだよ」


銀河さんの抑揚の無い低い声に、


「え、何処って………色々と。…ねえ湊ー、今日泊まっていい?もう家帰るのも面倒臭いんだけど」


伊織と呼ばれたその人はたじろいだ様に答え、すぐに話題を変えて。


すると、湊さんが返事をするより前に、航海に向かって一方的に戯れていた仁さんが反応して。


「君が居ると家が蒸し暑くなるから、僕としては君がそれをさっさと自覚して家に帰ってもらいたいよ」


「黙ってナルシスト、俺はお前に何も言ってないよ。俺が用があるのはみ、な、と!」


やはり、仁さんは色んな人にナルシストと思われている様だった。


その会話の一部始終を耳にしていた湊さんは、何故か銀河さんの肩を揉みながらふっと笑って。


「伊織さ、此処に空き部屋が沢山あるからって有効活用し過ぎじゃない?まあ良いけどね。……あ、そういえばこの家に新しく家族が増えたから、自己紹介してね」


特に何をする訳でもなくソファーに座っていた私の方を見て、微笑んだ。