ママの手料理

そして。


｢あ、さん付けも無しでお願いします、出来れば呼び捨てが良いです。僕、そんなに上に見られる程価値のある奴じゃないので｣


彼の言った内容は少し考えさせられるものなのに、彼自身は私の方を見て作った様な笑みを浮かべた。



｢ありがとう紫苑ちゃん、すっごい助かった！家に居る人はなーんにも手伝ってくれないからさ！あそこに居る航海みたいな人とかは特に！｣


しばらくして洗い物が終わり、泡だらけのスポンジを水で流していると、隣で食器を拭いている湊さんが私を見て嬉しそうに笑顔を浮かべていて。


｢すみません曲を聴いていたので何も聞こえませんでした、僕について何か言いましたか？｣


ソファーの方からは、航海の棒読みの声が聞こえてくる。


｢嘘つけ、曲なんて聴いてないの分かってるんだからね？｣


｢何で疑うんですか？僕は今ちゃんとpromiseの曲を聴いていました｣


わざとらしく尋ねる湊さんに向かって、彼は至って真面目に歌手グループ名まで出して返答した。


(え、promise！？)



promiseとは、日本語･韓国語･英語･フランス語を話せる7人のメンバーで構成された多国籍グループの名前。


ファンの名称はprotectで、その年齢層は小学生から高齢者まで、まさに老若男女様々だ。