ママの手料理

「え?何?航海と笑美?高校?」


丁度物思いにふけっていたところだったのか、彼の口から発せられたのはオウム返しになった私の台詞で。


もう一度聞こうと口を開くと、


「高校ですか?僕は通信制………何て言えばいいんでしょう、授業のテキストが家に届くので、その問題を解いて学校に送って…って感じでやってます。笑美さんは……どうなんでしょう?考えたことがなかったです」


私の声ーというより無駄に大きかった湊さんの声ーが聞こえていたのか、首をくるりと回転させてこちらを向いた彼は敬語で答えてくれた。


「あ、そうなんですか。ありがとうございます」


釣られて、私も敬語でお礼を伝えると。


「あ、別にニートとか不登校じゃないので安心してください。……後、僕に敬語を使わなくていいって言ってるじゃないですか」


と、彼も敬語を使いながら、私に敬語を使わないで欲しいという内容の返答が返ってきた。


「いや、でも航海…さんだって私に敬語……」


お皿の泡を流しながら私が突っ込むと、


「僕のは気にしないでください。敬語が抜けないだけなので」


航海さんは何かを思い出したのか、サングラスのせいで彼の目ははっきりと見えないけれど、微かに顔を歪めたのが分かった。