ママの手料理

「……めんどくせぇな」


続いて、缶コーヒーを片手に抑揚の無い声で話し始めたのは、琥珀さん。


「高杉 琥珀(たかすぎ こはく)、23歳。警察官やってる。……役割は覚えてねぇけど確か長男で、…俺の家族はお前と同じで、俺以外全員死んでる。以上」


(え、)


(家族が、全員死んでる……?)


一気に現実味を帯びたその話に、私は驚きの余り頭を下げるのも忘れてしまって。


他の人は当たり前だけれど全員それを知っているのか、特に驚く様子もない。


「急に重過ぎなんだけど」


ただ、大也さんだけが笑いながら発言して、


「湊が生い立ちがどうのって言ったから話しただけだろ、お前のも話してやろうか、どうせ実家は同じなんだからな?」


琥珀さんに冷ややかな目と不思議な提案をされて、


「ちょっと待ってそれは勘弁して、」


青ざめた顔で、大也さんが琥珀さんを止めていた。



「俺か、」


そして、パソコンに何かを打ち込んでいた男性が手を止め、パソコンから目を離して口を開いた。


「笹山 銀河(ささやま ぎんが)、歳は22。“ママの手料理”で働いてて、役割は……よく覚えてねぇが、長男のいとこ…みたいな複雑な位置にいた気がする。琥珀と大也と仁とは昔からの知り合いで……後、俺の名前がキラキラネームって言った奴はぶち殺す」