ママの手料理

「そうと決まれば自己紹介しないとね!ほら皆、椅子に座って!何ソファー座ろうとしてるの琥珀、こっち来て!……あ、立ったついでにちょっと笑美呼んできてくれる?2階に居るはずだから」


まるで私をここに泊めるという結論が出るのが分かっていたかの様に余裕たっぷりの笑みを浮かべた湊さんは、てきぱきと指示を出し始めた。


と言っても私達を椅子に座らせるだけなのだけれど、好き勝手に話してなかなか座ろうとしない大也さん達に手を焼いていて。


ようやく皆が席について、2階から降りてきた琥珀さんと笑美さんも空いていた席に座る頃には、最初に湊さんが指示を出し始めてから10分程が経っていた。



「皆、言う事は分かってるね?自分の名前と此処での役割と、年齢…?と、あと言いたければ自分の生い立ちとか?とにかく好きな様に自己紹介しちゃって」


暖房のおかげで温かい部屋の中、湊さんは立ち上がって皆に説明したついでに自己紹介を始めた。


「僕は、吉良 湊(きら みなと)です。此処での役割は一応父親?リーダー?的な感じかな。年齢は22歳で、このお店…“ママの手料理”っていうマカロン店を経営してます。宜しくね」


(一応父親って何?)


そんな疑問が頭を飛び交う中、私は軽く頭を下げた。