野宿するつもりかよお前、と、昨日も聞いた台詞を口にしながら、彼は、
「帰るぞチビ」
大して背は小さくない私の事をまた“チビ”と呼びながら、ずんずんと歩いて行ってしまった。
「これ持ってろ」
そのまま私達は何も話さずに駐車場の前で来たけれど、不意に琥珀さんがその空気を壊した。
「あ、はい」
琥珀さんに手渡されたのは、先程持っていた缶コーヒー。
まだ眠いのだろうか。
琥珀さんは左手で私に缶コーヒーを渡すと、そのまま左ポケットをまさぐり、左手で車の鍵を取ってロックを解除した。
そしてそのまま運転席のドアを開けて乗り込み、左手でドアを閉めて左手でシートベルトを締め。
「何突っ立ってんだよお前轢くぞ」
そして、助手席のドアを開けて缶コーヒーを両手で持ったまま立ち尽くす私を見て呆れた様に言葉を吐き出した。
「あ、ごめんなさい!」
慌てて私も車に乗りこみ、飲み物コースターに缶コーヒーを置き、ドアを閉めてシートベルトを締めながら、
「左利きなんですか?」
と、聞いた。
「………ああ」
車のエンジン音がかかる。
「右手、全然使わないんですね…」
それは、先程からずっと思っていた。
「帰るぞチビ」
大して背は小さくない私の事をまた“チビ”と呼びながら、ずんずんと歩いて行ってしまった。
「これ持ってろ」
そのまま私達は何も話さずに駐車場の前で来たけれど、不意に琥珀さんがその空気を壊した。
「あ、はい」
琥珀さんに手渡されたのは、先程持っていた缶コーヒー。
まだ眠いのだろうか。
琥珀さんは左手で私に缶コーヒーを渡すと、そのまま左ポケットをまさぐり、左手で車の鍵を取ってロックを解除した。
そしてそのまま運転席のドアを開けて乗り込み、左手でドアを閉めて左手でシートベルトを締め。
「何突っ立ってんだよお前轢くぞ」
そして、助手席のドアを開けて缶コーヒーを両手で持ったまま立ち尽くす私を見て呆れた様に言葉を吐き出した。
「あ、ごめんなさい!」
慌てて私も車に乗りこみ、飲み物コースターに缶コーヒーを置き、ドアを閉めてシートベルトを締めながら、
「左利きなんですか?」
と、聞いた。
「………ああ」
車のエンジン音がかかる。
「右手、全然使わないんですね…」
それは、先程からずっと思っていた。



