ママの手料理

「警官の分際でいちいち無駄な感情移入をするな」


中森さんの震える声を一言で制した彼は、


「何で親戚に預けられなかったんだよ」


と、私を睨み……いや、見ながら問うてきた。


「あ、それは、確か両親が駆け落ちをしたかなんかで、両方の親戚と疎遠になったって聞きました」


確か、という箇所を強めて答えると、


「え、駆け落ちって長年の夢なんですよね私」


中森さんがにやけながら琥珀さんの肩を叩き、


「勝手にしてろ、あと触るな死ね」


苦虫を噛み潰した様な顔を中森さんに向けながら、琥珀さんは冷たく言い放った。


「……んじゃ、この2つが最後の質問だ。…何で丸谷家は引っ越したか理由は分かるか?それと、お前の引き取り先は親戚の中に居ると思うか?」


死ねとか人聞き悪いこと言わないで下さいよ…、とぶつぶつ呟く中森さんの言葉を無視した彼の質問に、私は少しだけ考えて口を開いた。


「お父さんが、引っ越しの理由は兄弟達が大きくなってきて家が狭くなってきたからって言ってました。あと、引き取り先は…、私、丸谷家の親戚と全然会った事がなくて、というか親戚が養子を取る事に反対だったみたいなので、多分居ないんじゃないかなと思います」