ママの手料理

真っ白なシーツが地面に落下してきて、


『あ、紫苑ちゃん!大丈夫か!』


火災に気付いた近所のおじさんが私に駆け寄ってきて、消防車のサイレンの音が聞こえて。


でも、遅かった。


『あ、』


両親の寝室は炎に飲み込まれていて、窓からは赤が吹き出していた。


『っ、やだ!お母さんっ!お父さんっ!』



その後、優しいおじさんは私の目に両手を添えて何も見えない様にしたけれど、そんな要らない動作ももう遅過ぎて。


私の家は、10年間の思い出は、音を立てて崩れた。



「…その後、私は“みらい養護園”って名前の児童養護施設に預けられて」


その養護施設の名前を出した時だけ、ずっと虚ろに一点を見ていた琥珀さんの目に光が宿った。


「で、しばらくして今の…丸谷家に引き取られて、それで、2週間前位に南山に引っ越してきて、……こうなりました」



「………なるほどな」


簡単な一連の私の過去を聞いた琥珀さんは、特に変わった様子もなくそう呟いた。


隣に座る中森さんは、途中からペンを走らせる手を止めて涙を拭っているというのに。


「2回も家族を亡くされてるなんてっ………しかも、生き残りが自分だけ……、私なら耐えられない」