『お母さん達がシーツを持っててあげるから、紫苑はシーツに掴まって下まで降りなさい。降りたら、シーツを下に引っ張って。それがあなたが下に降りたっていう合図だから』


『やだ!お母さんから外行って!』


怖くて、熱くて、もう火の手がすぐそこまで迫っている。


『紫苑、お母さんの言う事を聞くんだ。……降りたらちゃんと周りの人に助けを求めるんだよ、良いね?』


足が笑っていて、熱くて汗をかいているのに手の震えは止まらない。


『ほら、行きなさい。ちゃんと持っててあげるから』


「だから、私は一番最初に窓から外に降りて……でも、」


『ちゃんと降りて来てね』


怖がりな私が、最後までそうやって念を押すと、


『当たり前だよ、紫苑』


『そんなに心配しなくても大丈夫よ』


2人は炎が近づく中私に向かって笑ってくれて、私が降りている最中も窓から顔を出して、


『紫苑、ゆっくりで良いからね!』


『すぐに行くからな!』


そうやって、声を掛け続けてくれた。


だから、私は地面に足をつけた直後、


『降りたよ!』


そう言いながら、言われた通りにシーツを軽く下に引っ張った。



つもりだったのに。


「シーツが落ちてきて……。だからお母さん達は、降りれなくて、全部私のせいで、」