「…………私は、丸谷家に養子として引き取られたんです」


彼の言葉に驚きをやはり隠せなくて、けれど私は渋々話し始めた。


なんせ事情聴取なのだ、此処で拒否をしたらどうなってしまうか分からない。


「元々、私は谷川家に生まれて、そこで両親と育ちました」


一人っ子だった私を、両親は宝物の様に大切に大切に育ててくれた。


幼少から英才教育を受け、人に自慢出来る程裕福ではないけれど好きな事は出来るし不自由もしない生活。


それに満足していたし、いつか絶対親孝行をしたいと考えていた。


けれど。


「5年前……私が10歳の時、火事に遭って」



それが放火なのか事故なのか分からないけれど、とにかく、私の家は火事で全焼した。


『お父さん!お母さん!燃えてる!』


夜中、焦げ臭いにおいで起きた私は、廊下から自室に迫る火の手に脅えて隣の部屋ー両親の寝室ーに駆け込んで叫んだ。


『とうとう来たか』


その時のお父さんの覚悟を決めた様な声と目つきは、今でも忘れられない。


『紫苑、良く聞いて。お母さん達は後から此処を脱出するから、あなたは今すぐ窓から外に出て。ほら泣かないで、大丈夫だから』


お母さんは私に何かを言う隙を与えず、まだ燃えていない布団のシーツを引き剥がし、それを巻いて長細くした後開けた窓から外に放った。