その瞬間。




ブサッ………




理解し難い音が、扉の向こうから聞こえた。


直後に、誰かが倒れる音も。


(……?)


向こうで何が起きているのかまるで分からず、私が眉をひそめていると。


「や、め………!」


お父さんの声が聞こえて、またあの“ブサッ……”という音が響く。


(待って、何が起こってるの!?)


怖過ぎて、クローゼットから出られない。



そのうち。


「あれれ、ママンとパパンって子作りしてなかったっけ?」


「本命はそっちだろ?」


「そっかー。へへへ、何処かなぁ?」


騒ぎながら、突如知らない人達が子供である私達を探し始めた。


(えっ!?)


恐怖が足元から這い上がってきて、私は本能的に扉に這わせていた手を引っ込めた。


元々狭いクローゼットの中で、息を潜める。



しばらく、私がそうしていると。


「あーっ!1人はっけーん!可愛いお嬢ちゃんだっ!僕メロメロ」


妹が、見つかった。


「っ、やだぁーー!来ないで来ないで!」


「ええめっちゃ可愛いんだけどぉ!ばいばーい!」


「くっ!………」



隠れていたのが見つかって叫んだはずの妹の声が、消えた。