「どうって……、まぁとりあえず酷かった」


リビングに入るタイミングを完全に逃した私は、仕方なくドアの近くで聞き耳を立てた。


「どんな感じよ?」


「…殺人現場は何回か行った事あるけど、結構…色んな意味でやばかった、あそこは」


誰かが大きく息を吐くのが、はっきりと聞こえた。


「あの家からよくあの子は外に出れたな、って感心しちまったよ」


「それってどういう意味?」


誰かの真剣な声が聞こえて、


「多分真っ暗闇だからあの子は分かんなかったんだろうけど、……壁も床も全部真っ赤だったよ。血のせいで足の置き場が無くなる位な」


自分の感情を押し殺した様な、静かな琥珀さんの声が聞こえた。


(…!?)


その台詞を聞いた私は、信じられなくて目を見開いた。


私がクローゼットから出て、家族1人1人の亡骸に寄り添っていたあの時、床は私の想像以上に血だらけだったなんて。


(…何で、)


背筋に嫌な汗が流れた。



「…だから紫苑ちゃんはあんなに血だらけだったの?」


大也さんの震える声が、ドア越しに聞こえた。


「…それもあるだろうけど、なんてったって遺体がよ……、遺体に、もう物凄い数の切り傷が付けられててよ」