けれど、誰からの返事も帰ってこない。


(あれ……?)


頭の中で響いていたはずの兄妹の声が消えうせ、ぼんやりとしていた視界がはっきりしていく。


そこは、私が見慣れていたー見慣れかけていたーアパートの部屋ではなく、昨日大也さんが使って良いよと言ってくれた部屋だった。


(あ、……)


そう、夢ではなく、昨日私の家族は全員死んでしまったのだ。


現実と夢が混同してよく分からなくなっていた様だ。


「っ………」


朝っぱらから涙が出そうになり、私は慌てて強く瞬きをして廊下に出た。


今の時間は、8時過ぎだった。



誰にも会わないまま2階の廊下を歩き、階段を下りていると。


「……お疲れ、どうだった?」


昨日から沢山聞いてきた大也さんの声が、リビングから聞こえてきた。


「…お疲れなんてもんじゃねぇよ、今すぐコーヒー飲ませろ。今日は多分徹夜だからな」


そして、微かに聞こえる声は警察官の琥珀さんのものだろう。


昨日夜中に此処を出て行ったから、ほとんど寝ていないのだろうか。


「紫苑ちゃんのお家行ったんでしょ?どうだったどうだった?」


続いて、元気そうな声ー仁さんだろうーの声が聞こえてきて。