クローゼットを見ているだけで吐きそうになった私は、目を伏せてベッドまで歩き、ゆっくりと横になった。


闇に浮かび上がる天井の色は当たり前に真っ白で、けれど数時間前は同じ様に真っ白だった私の家の壁は真っ赤に染まっていて。


瞬きをした瞬間、何故か天井の色が血の色になった気がして。


「あ、……っ…」


思わず叫びだしそうになった私は、慌てて口を抑えて姿勢を横向きに変えた。


何も見ないように、見えないようにふかふかの低反発の枕に顔を押し付けて、その枕を抱き枕の様に抱き締めて。


脳内で何度も家族の死に際の声や、日常生活での会話、そして彼らを殺したと思われる男達の声が再生される中、私は縋る思いで夢という名の命綱にしがみついた。



いつの間にか流れていた涙が、枕を濡らしていた。




『ねえーもう朝だよ起きて起きて!』


『起きてよ、一緒に遊ぼ!…んー駄目、寝ちゃ駄目!こっち来るの!』



「…うん、…分かった、遊ぶから……」


遠くから、私を呼ぶモモとハズキの声が聞こえる。


まだ寝ていたいのに…、と、彼らの声で起きてしまった私はぼんやりとした頭で考えながら起き上がり、近くに居るはずの2人に向かって、


「何して遊ぶ?」


と、笑顔で呼び掛けた。



はずだった。