ママの手料理

「これは命令だよ、笑美。パジャマを着ても紫苑ちゃんは汚くならない」


湊さんが“命令”と言った瞬間、


「誠に申し訳ございませんでした…仰せのままに」


今までの言葉は何処へやら、笑美さんはその場に座ったまま先程よりも深く深く頭を垂れた。



「紫苑ちゃーん、お腹空いてない?夜ご飯何も食べてないでしょ?タピオカとマカロンとワッフルなら大量にあるんだけど食べる?」


リビングに戻ると、冷蔵庫を開け閉めしながら大也さんが質問をしてきた。


けれど大也さんに続いて、あと少しで2時になるぞ、寝た方が良いんじゃ…、と私の後ろでぼやく湊さんの声はその場に立ち尽くす私には届いていなかった。


(え、大也さんの髪の色……、)


私は、大也さんの頭ー髪の色ーに、衝撃を受けていたのだ。


「え、何食べるって?」


私が何も返事をしていないのに空耳が聞こえたのか、大也さんは私の方へ振り返り、


「あー髪の毛?」


私の目線に気づいたのか、自分の美しい白金の髪の毛を触って、ふっと笑みを漏らした。



「それ、染めたんですか…?」


先程まで闇に溶け込める程の黒髪だったのに、私がお風呂に入っている間に髪の毛の色を変えたなんて凄過ぎる。