ママの手料理

どうすればいいのか分からなくなって、私が立ち往生してしまったその時。


「どうした、笑美」


リビングのドアが開き、湊さんがつかつかとこちらに歩いてきた。


「ご主人様……っ、」


笑美さんの口から出たその思いもよらない言葉に、私は口を開けて固まってしまう。


(ご主人様!?)


「笑美、何を大声で言ってるんだ?リビングまで丸聞こえだったぞ。…あれ、仁は?」


「申し訳ございません、ご主人様…!」


湊さんがそう言うと、笑美さんは先程と打って変わって床に座ったまま頭を垂れた。


「仁様は、先程自室に戻られました…!そして、私は…、私のパジャマを、その方が…着られていたので、汚くなってしまう、と説明していました…」


俯きながらそう話す笑美さんの肩に、湊さんが優しく手を置いた。


「何で笑美のパジャマが汚いの?」


「それは、…私が、下僕だから……」


その言葉に、私は開いた口を塞ぐ事も出来なくて。


(げ、下僕…!?)


この2人はどんな関係性なのか、若干気になってしまう。


「笑美、僕らは家族だよね?もう君は汚くないから、そもそも汚くなかったし。…だから心配する事なんて何もない。分かったね?」


まるで親の様に諭している彼に、ですが…、と、笑美さんはまだ言い足りない様に口を開いたけれど。