ママの手料理

「此処がお風呂ね。隣にはトイレもあるから。あ、上がったらまたリビングに来て貰える?お腹空いてたら何か出すし、寝るなら部屋まで案内するから。後、パジャマとかは笑美…この家に住む女子のものを一旦貸すね」


すぐにお風呂場に案内してくれた大也さんは、手短にシャワーの使い方や使っていいバスタオルやトイレの場所等を教えてくれて。


「すみません、ありがとうございます‪…」


小さくなりながら謝る私に、


「大丈夫。お風呂行ってらっしゃい」


彼は、笑って小さく手を振ってくれた。


お風呂でシャワーを浴びると、洗面所で取れなかった血が沢山流れた。


家族の生きていた証が、髪の毛を洗う度に床に落ちて流れて行く。


そのまま、私も一緒になって流れて行きたいと思ってしまった。


私が行き着く先は、きっと亡くなった家族の元だから。



お風呂から上がり、笑美さんという人のパジャマに腕を通し、先程まで血で固まっていた髪の毛を軽く結んだ私はリビングに向かっていた。


案の定、足の裏はコンクリートの跡がついていたり切り傷が出来ていたけれど、もう余り痛くない。


するとその途中で、廊下を雑巾がけをしている女性が目に止まった。


(あ、笑美さん…?)


この人が笑美さんかもしれない、と思った私は、感謝の気持ちを伝えようと、


「あの、笑美さんですか?」


声を掛けた。