お母さんでもお父さんでもない、複数の人が騒ぎながら家に入ってくる声が聞こえてきた。


(えっ、誰…?)


初めて聞く癖の強い声達に、思わず悲鳴を上げかけて、クローゼットから飛び出しかけて。


『何があっても、隠れた場所から出てきちゃ駄目だ』


『声も出しちゃ駄目だ』


そう、何度も念を押していたお父さんの声が蘇り。


私は、片手で口を押さえて身体を縮こめた。



「あー!僕のママンとパパンが居るぅ!」


「いつからこいつらがお前のもんになったんだよ」


「まあまあ、そう喧嘩すんなって。どうせこれで最期なんだから、2人の可愛いお顔は今のうちに拝んどけ…っ、やべ笑いが……ふふっ、…」


「あれれ女が何か言ってるっすね」


3,4人程の声が、重なりながら家中に響く。



そんな中。


「ろくじゅうにー……ろくじゅうさんー…」


お母さんの数を数える声が、私の耳に届いた。


誰かが来てもかくれんぼを続行している時点で、感じるものはもう違和感しかない。


(何なの、誰が来てるの?)


それでも、私はただクローゼットの中でじっと息を潜めていた。


「ママン、少しうるさいから黙って欲しいなぁ」


「言うてお前が1番うるさい‪けどな」


「お前ら黙ってさっさと殺っちまえよ」


「え、僕殺っていいの?」


何だか、知らない人の会話の内容が怖い気がする。


(え、待って……?)