ママの手料理

「もしもし、俺だ。…あ"ぁ?オレオレ詐欺?ふざけてんのかお前捻り倒すぞ」


しばらくして電話の相手が出たのか、かなり悪い口調で警察官さんは話し始めた。


「だから俺だって言ってんだろクズが。…有難く思え、お前に用が出来た。今日の夕方頃に近くのアパートで殺人事件が発生したそうだ。今すぐ現場に向かえ」


『近くのアパートって何処ですか?しかも今から……詳しく言ってくださいよー』


電話口からは、遥かに予想外だった女性の声が聞こえてきて。


「あー、」


そう呟き、彼は私に


“駅名とアパート名、それから号室を言え。さもないと……”


と言いたげな目を向けてくるから。


「え、っと…南山(みなみやま)駅の、ガーデン南山…203号室です」


私は、必死で記憶に残っていたその単語を口にした。


「南山駅、アパート名はガーデン南山、203号室だそうだ。…ガレージ南山じゃねえ、ガーデンだ、ぶち殺すぞクズが」


警察官さんは、自分の手帳を見ながら私が言った情報を簡単にまとめて説明する。


「今日の午後、家族と過ごしていた女子…高生か?の家に、知らない男性が数人侵入して彼女を除く一家全員を殺害したらしい。…あぁ、今俺の家で保護してる。…凶器?んなもん現場行って見て来いよ、俺もすぐ行くから。…ちゃんと鑑識達も呼んでおいてくれよ、頼んだ」