ママの手料理

「いえいえ、滅相もございません!仁様と航海様の方こそゆっくりとお休みになられて下さい!掃除は、私がやりますので!」


仁さんと女の人の阿吽の呼吸の様な話し声に、テーブルを囲んでいる私達4人は聞き耳を立てた。


「航海、先に部屋行って寝てな。…笑美、僕と一緒にや」


「止めて下さい!掃除は私の仕事です!お願いですから仁様、お部屋にお戻りに…」


そして、少しの間が空き。


「待って、何で土下座までして頼み込んじゃうの…。やだなぁ、顔上げて?…笑美、僕の整った美しく素晴らしく国宝級のこの顔を見て」


仁さんの、耳を疑う台詞が聞こえてきた。


確かに仁さんの顔は彫刻のように整っていて、長身でスタイルも良くてモデル顔負けの美貌を誇っている。



けれど。


「…気持ち悪ぃなあいつ、鳥肌もんだわ」


静かに仁さんの声を聞いていた警察官さんが、苦虫を噛み潰した様な顔をして呟いた。


「仁のナルシスト性格、何とかならないものかな」


隣では、湊さんも神妙な顔つきで考え込んでいる。


「…もう良いよ仁の事なんて!そんな事より紫苑ちゃん、続きを話してあげて」


そんな2人に向かって、大也さんは手を叩いて私に話をする様に促した。


「…続きより、最初から詳しく話せるか?その端折られ過ぎた話だと普通に一家心中に聞こえるが、そういう訳じゃねぇんだろ」