ママの手料理

「そのジジィに、何か握られてたんだろ?お前、言われた通りにやらねぇと俺らにバラすって脅されたからこんな事したんだろ」


今までずっと会話に入らずに傍観していた彼の声は、氷の様に冷たかった。


私に向かって話しているわけではないと分かっていても、その声は容赦なく私の心も抉ってくる。


現役警察官で現役怪盗でもある彼は、今この部屋にいる誰よりも強く凄まじい気を放っていた。


「何言ってんだよお前、俺に弱みはない」


「寝言は寝て言えクズ」


半ば噛み付くようにそう言った彼は、ひと呼吸おいてゆっくりと言葉を紡いだ。





「…お前だろ、俺の右手を不良品にしたのは」





「え、……?」


猿ぐつわの下から、間抜けな声が零れた。


(何て…?今、琥珀何て言った、?)


私は動揺し、助けを求める様に銀ちゃんの方を向いたけれど。


彼がそっと私と合った目を逸らし、何とも言えない顔になるのを見て、全てを察した。


(え、…本当なの、?)



そして、真後ろの裏切り者はどうやらご立腹のようで。


「何で俺になるんだよ!?ふざけるのも大概にし」


そう言うけれど、彼の声にも動揺の色が見えた。


「喋るな」


琥珀は、怒りを必死で押し殺しているようだった。