ママの手料理

2つ目の計画は、伊織がmirageを裏切らず私も誘拐されなかった時の為の計画だ。


mirageは最後の最後まで伊織を信じて、2つ目の計画が実行されるのを願って今日という日を迎えた。


しかし、現実は残酷で。


「…まあ、実行したのは3つ目の計画だったけどな。…俺らはお前の事信じてたのに、何なんだよ…」


そう言い放った壱さんの声は震えている気がして、そこからは怒りとも悲しみとも取れる、何とも言えない感情が伝わってきた。


それもそのはず、壱さん…いや仁さんと伊織は、2人で“パパの手料理”を経営していたのだから。


仁さんも壱さんも、怪盗云々以前に1番の仕事仲間でもあった伊織に裏切られたという現実に対するショックは想像を超えるものがあるだろう。


「信じる?簡単にそういう事言ってるから騙されるんだろアホが、あとお前のクズ兄貴出せよ。壱は可哀想だよなぁ、いつも闘いの時だけこき使われてて」


伊織が鼻で笑った。


今の彼には、mirageのどんな言葉も届いていない。


「あいつがどんな思いで俺を作ったか知らねぇくせに憎まれ口叩くんじゃねぇよ!」


「……あーうるさい、もうそろそろ終わりにしていい?早く殺したいこのガキ」


壱さんが思わず殴りかかろうとするのを隣に居た銀ちゃんが急いで制止し、それを見ていた伊織は馬鹿にしている様にまた鼻で笑った。