ママの手料理

鼻で笑った後、警察官さんは大きく欠伸をした。


｢んで、何で俺を呼んだんだよ｣


｢…あ、えっと、あの、｣


私は震える声を吐き出した。


｢…目が覚めたら、親が…私を除いた家族全員が、死んでたんです…、｣


｢おっとぉ｣


その瞬間、警察官さんの隣の椅子で驚いた声をあげた湊さんは、


｢ごめん仁(じん)、航海を部屋に帰らせてくれる？で、仁はそのまま笑美を呼んで、廊下の掃除を一緒にして欲しい｣


サングラスの男の人と一緒に楽しげにスマホでゲームをしていた仁さんにそう告げた。


｢何、急にこの僕に指図するなんて…。しかも掃除も？信じられない、僕を誰だと思ってるの？｣


｢仁にわざわざ部屋を貸してやってるのは誰だと思ってるの？｣


笑顔になった湊さんのドスの効いた声を聞いた途端、


｢ごめんなさい行ってきます、さあ航海行くよー！…笑美ー、笑美居る？｣


仁さんはサングラスの男の人ー航海さんーの腕を引っ掴み、半ば引きずるようにしてリビングを出て行った。


そして、数秒後。


｢お呼びでしょうか、仁様。どうなさいましたか？｣


パタパタと誰かが走る足音が聞こえ、可愛らしい女の人の声が聞こえてきた。


｢あのね、僕と一緒に廊下の掃除やらない？…って湊に頼まれたんだよね。笑美眠いでしょ、寝てても良いけど｣