「ネタばらし、しちゃってもいい?」


後ろを振り返り、小首を傾げて可愛く問う湊さんに、


「言っちまえ」


ゴーサインを出したのは、今まで何も話さずにじっと伊織を睨み続けていた琥珀だった。


その彼の目からは、殺気よりも酷い怨念の気が感じられる。


(……、)


この目に捕まったら死んでしまう、と、直感で感じた私は、瞬時に彼から顔を背けた。



「まず、伊織はmirageに加入した時から自分の家を別に持ってて、1度も僕らと寝泊まりをした事がなかった」


私が人質に取られ、部屋の隅ではOASISの2人の幹部が気絶していて、私の隣では荒川次郎が息絶えている。


そんな非現実的なこの空間で、探偵気取りの湊さんは静かな声でネタばらしをし始めた。



「最初は、僕達は伊織を家族だと思っていたしそれはこれからも変わらない。…けど、紫苑がこの家に来てから、君は明らかに変わった」


「まず、紫苑さんの名前を聞いた時のあの態度。紫苑さんについて何かを知ってるとしか思えませんでした。…人の名前を覚えられないからって、翌日に紫苑さんの名前をわざと間違えたのは素晴らしいと思いますが、褒めるべき点はそこだけです」


航海の台詞は、明らかに伊織の神経を逆撫でしている気がする。


黙ってその推理を聞いている伊織のナイフを持つ手に力がこもった気がして、私は思わず顔を歪めた。