本当は、もう少し感動的な最後というか、もっと戦闘があって最後に誰かが涙を流しながら荒川次郎を殺す、みたいな感じかと思っていたから、思わず拍子抜けしてしまった部分もある。


有り得ない程すんなりと事が運びすぎていて、若干困惑する部分もあるけれど。


元々、荒川次郎を殺す事が本来の私の復讐の目的だったわけだから、これはこれで良いのだろう。


と、私が1人納得していると。



「で、今すぐにでも紫苑ちゃんの縄を解いてあげたいところなんだけど……」


不意に、湊さんの声から明るさが消えた。



私が初めて“ママの手料理”に訪れた夜、洗面所で湊さんは困惑しながらも大也のことを呼んだ。


あの時と同じ、ドスの効いた低い声が、彼の口から流れ出る。





「その前にはっきりさせないといけない事がある。……裏切ったね、伊織…いや、OASISの13人目の幹部、ニュー?」


その言葉が聞こえたのと、私の隣で今まで微動だにせず沈黙を貫いていた伊織が、私の首を掴んでナイフを当てたのはほぼ同時だった。


「ひっ、……!」


今私の背後に立っている人はmirageの一員で、けれどOASISの一員でもあり。


目を大きく見開いて助けを求めるけれど、


「お前、まじで何してくれてんだよ…?」


まさに柔道でいう背負い投げをして幹部の上に乗っかっている壱さんは、そんな私を無視して感情を押し殺したような、哀しい声を出した。