(いや、死なない死なない無理無理無理早く助けに来てお願いお願い…)


どれだけmirageの事を信頼していても、喉元までせり上がる恐怖には打ち勝てない。


「ゃ、………」


(無理です神様助けて下さい無理です神様助けて下さいお願いします)


荒川次郎の持っていた銃がカチリと音を立てた瞬間、私は最後の信仰対象をmirageから神様に変更してぎゅっと目をつぶった。



1秒1秒が無駄に長く感じた。


(大也、もう1回“大丈夫だから、俺を信じて?”って言って!お願い!早く!)


何度も聞きすぎて聞き飽きた、けれど無性に安心するあの台詞を、最後にもう一度聞きたい。


ふっ、と、誰かが息を吐く音が聞こえる。


「っ、」


そして、余りの恐怖に耐えられなくなった私が潔く考えるのを止め、息を止めて全身に力を入れた、その瞬間。






「荒川次郎、見ーつけた!」



ずっと聴きたかったあの声が、聞こえた。


(嘘、……)


私の後ろから、この部屋のドアを蹴って壊したのか、ドンッという鈍い音と、


「いやあ紫苑ちゃん!?いや待って伊織!?2人共此処で何してるの!?」


と、1人でぎゃあぎゃあ喚く大也の声が流れ込む。


こんな金切り声を聞いて安心したのは、生まれて初めてだ。