ママの手料理

「デルタの睡眠薬付きの吹き矢、効果てきめんだねー。……おいお前!ガンマもエータもお前のせいで死んだってよ!いい加減にしろよクソガキ!」


ぱっと目を覆っていた布がはぎ取られ、ぼんやりとした視界の中で私が捉えたのは。


「お前のせいで何人死んだと思ってる?ふざけるのも大概にしろよ!ひと思いに殺してやる…!」


数時間前に一度見た、裏切り者の悪魔の微笑みだった。



「どれだけ人が死ねば気が済むんだ?あ?お前の2つの家族は死に、ガンマもエータも死んだ。大勢のOASISがお前のせいで死んだ!mirageからも怪我人や死人が出てるだろうなぁ、お前のせいで!」


私は伊織に胸ぐらを掴まれ、宙に浮かぶ形で彼からの怒号を浴びせられていた。


息がしにくくてとても苦しい。


「ん、んんっ…!」


助けて、と言いたくて声を上げ、涙が浮かぶ目を必死で伊織に向け続ける。


(こんなの、伊織じゃない…!元に戻って、お願い!)


私は、ガンマといた部屋とは違い、随分と社長室のような雰囲気が漂う部屋に閉じ込められていた。


こちらを睨みつける伊織の向こう側には机と座りやすそうな肘掛け椅子があり、こちらに背を向けて椅子に座っている人が見える。


その机の前ではガンマといた部屋の見張りをしていた男性が1人と、階段で私のことを追いかけてきたドレッドヘアの男性ーデルタというらしいーが立っていて、こちらに冷ややかな目線を送ってきていた。