ママの手料理

ふっと鼻で笑った瞬間、俺は勢いよく間合いを詰めてそいつの顔面を蹴り飛ばした。


その時に宙を舞った注射器を痺れた右腕で掴み取り、すかさず相手の太ももに注射する。


幹部のくせに防備の体勢も取らず間抜けな姿で倒れ込むラムダに向かって、俺は、


「これで道連れだね」


と、捨て台詞を吐いて片頬を上げ、階段の方へ駆け出して行った。


もしかしたら、俺は航海よりもサイコパスかもしれない。



「何なんだあいつ、まじで許せないんだけど…!」


ラムダを残した俺は、階段をゆっくり上がりながら1人胸にごちていた。


あの毒の効き目は思ったより早いのか、注射されてから5分程なのにもう身体中が痛くてどっと疲れが押し寄せている。


(いや、ただ俺が疲れてるだけ…?)


この身体の痛みが疲れなのか毒なのか、それさえ分からない。


というより、何をしたって毒の巡りを遅くする事は出来ないのだから考えたって仕方がない。


「とりあえず、紫苑ちゃん助けて荒川次郎を殺さないと…、」


5階、6階には闘えるOASISの姿はなかった。


5階はもぬけの殻、宝がたんまり眠っている6階では何人ものOASISが眉間に穴を空けて死んでいたから、きっと航海の仕業だろう。


(航海も、銃の取り換えした方がいいんじゃないの…?)