ママの手料理

(はぁっ!?)


彼岸花ってなんだ、あの岸辺や墓地に咲いてる真っ赤な花のことではないか。


「何これ、これって…俺もしかして死ぬの?」


自分の声は、想像以上に震えていた。



mirageとして活動する事は常に死と隣り合わせだし、実際自分も何度も死について考えてきたから、今までの俺ならそこまで驚くようなことではなかった。


そう、今までは。


「君は死ぬってさっきも言ったよぉ?人体実験はした事がないけど、マウスは皆死んだよぉ」


「そう……」


右腕がとにかく痛い、まるで長く正座をした後に立ち上がった時に来るあの激痛のようだ。


(何でこのタイミングでこの人は俺にこんな事するかなあ!?せっかくあと少しで紫苑ちゃん助けられそうだし、昨日やっと琥珀に想いを伝えられたっていうのに!)


ここで死んだら俺の琥珀への愛はどうなるんだ、琥珀が他の女性に取られてしまう事だけは意地でも食い止めたい。


「だから、君はもう使えないねぇ。将棋で言ったら歩だよぉ」


しかも何なんだこの人の話し方は。


妙に語尾を伸ばしていて、いらいらしてくる。


仮にラムダの言っている事が本当だとしたら、こんな所で道草を食っている場合ではない。


「…歩はね、相手の陣地に行ったら金になるんだよ?知らなかった?」