ママの手料理

「へぇ、ラムダね…。いや質問答えろよ、その注射器で君は俺に何をしたのかって聞いてんの!」


ラムダとは本名ではないだろう、きっと幹部のうちの一人だ。


(幹部が研究員なんて情報、銀子ちゃんも伊織も教えてくれなかった!何なんだ酷いぞあいつら!)


大切な情報を教えてくれなかった仲間にも今ここで薄ら笑いを浮かべているラムダにもムカついてきて、俺はきっと彼を睨みつけた。


「…これはねぇ、企業秘密なんだぁ。実験で使ったマウスは皆コロリと死んでいったよ」


「いやマウスなんてどうでもいいから!早く質問に答えてくんない!?」


わざわざいらない茶番をするためにここに居る訳では無い、とっとと終わらせて皆の元へ行かなければ。


そう思い、間合いを詰めたその時。



ズキンッ………


注射をされた右腕に、鈍い痛みが走った。


「っ…」


今まで感じた事の無いそれに、思わず顔をしかめる。


それを見たラムダは、ケラケラと笑った。


「もう始まったねぇ、あと少しだよ」


心臓の鼓動と共に、注射をされたところがズキズキと痛む。


「これはねぇ、彼岸花の毒を混ぜた特殊な薬なんだよぉ。すぐに君の右腕は痺れてきて、30分もしないうちに感覚がなくなる。その後は身体中が痺れて震えてきて、目眩と吐き気がして…。持って1時間ってところかなぁ」