ママの手料理

(あいつ、俺の腕に何したんだ…?)


瞬時に体勢を変え、何かー注射器かーを持つOASISを睨みつける。


「お前、何…」


困惑した様に何かを言いかけた琥珀に向かって、俺は彼の方を見ずに叫んだ。


「琥珀、早く皆の所に行って!俺は後から合流するから!」


「っ…」


俺の呼びかけには答えなかったものの、彼がこの場を離れていく足音が聞こえた。



(大丈夫、琥珀は助かった。…良かった、守れた)


愛しい人を守れた幸せで、思わず涙が出そうになる。


(あいつ、知ってか知らずか琥珀の感覚のない右腕を狙ってた…)


もしあのままの状態だったら、琥珀は注射器で注射されたとしても全く気づかないわけで、その最悪の状況を回避出来たことにまずはほっとする。


目の前にいるOASISは白衣を身につけて黒縁メガネをかけており、いかにも研究者のようないでだちをしていた。


だからこそ、持っている注射器の薄い赤色が余計に目に入る。


「ねえ、君俺の腕に何したの?君の名前何?その注射器は何?」


戦闘態勢として身構えながら、低い声で幾つもの質問を投げかける。


「…ふふっ、僕の名前はラムダ。君はじきに死ぬよ」


暫しの沈黙の後、OASISのそいつが放った言葉に俺は思わず舌打ちをした。