ママの手料理

その時、


『皆聞いてっ、…紫苑を見つけた!上の階に向かってるから、取り敢えず僕は紫苑を追いかける!…君達は武器貯蔵庫で僕と銀河の分の武器も手に入れて欲しい!頼んだよ!』


と、無線機から音割れと呼吸音の激しい湊の声が聞こえてきた。


(紫苑ちゃん見つかったのね!良かったぁー)


湊の連絡を受け、ほっと胸を撫で下ろした俺ー伊藤 大也ーとは違い、


「はぁ?あいつ、何処でチビを見つけやがった」


琥珀は一瞬眉をひそめたけれど、まあいい、と呟き、既に階段を上がり始めている2人に続いてそちらへ向かって行った。


それを見た俺も、慌てて追いかける。



と。


「……!?」


その時、俺は階段に向かって歩く琥珀に狙いを定め、階段の隣にある‘’化学室‘’と書かれた部屋の方から一直線に走ってくる敵の姿を捉えた。


(え、琥珀!)


最愛の人は真反対の方向を向いていて、何も気づいていない。


「危ない!」


敵は何かを手にしていて、それが琥珀の右腕に向かうのを察知した瞬間、俺は走って琥珀の背中を渾身の力を込めて押し、彼をその場から突き飛ばした。


「!?」


「っ…!」


数メートル先に尻もちをついた琥珀が驚いたように俺の方を見るのと、右腕にちくりとした痛みを感じたのはほぼ同時だった。