ママの手料理

「…あの、大也、さんの血は私がつけただけで…、で、手のこれには色々あって……」


手と足をしっかり洗い、ついでに腕も軽く擦って家族の血を落とした私が、湊さんから渡されたタオルで手を拭きながら2人に説明しようとすると。


「…ごちゃごちゃうるせぇなさっきから、特にみな…誰だこいつ、」


鏡越しに、また見知らぬ男の人が姿を現した。


「え、…?」


彼は、この短時間で私が見た4人目の男性だ。


大也さんと同じ位の背の高さで、目が隠れる程の漆黒の前髪を伸ばしているその男の人は、私を値踏みする様に頭の上から足の先までじろじろと見つめて、一言。


「廊下の赤い足跡、こいつのか。そもそもこいつ、何でこんなに血だらけなんだよ。…大也お前何かやったのか」


「待って!?何でそうなるの銀河(ぎんが)、何を根拠にそんな変な事言ってるの!?紫苑ちゃんに誤解されちゃうじゃん、!」


大声を出した大也さんと正反対で、ずっと冷ややかな目に冷たい口調の銀河さんは、また私の事を見て。


「何だか知らねぇけど、取り敢えずその服取り替えな。笑美(えみ)のでも貸せば何とかなるだろ」


今度は女の人の名前を出しながら、眠そうに欠伸をして洗面所を出て行った。


去り際に、


「俺寝るわ。…後お前らの声、響くからまじで黙れ?」


と、湊さんの時よりドスの効いた恐ろしい声を出しながら。