ママの手料理

「ぁ、………」


あともう少しで逃げ切れたのに、あともう少しで湊さんの元へ行けたのに。


視界が歪み、手足から力が抜ける。


目の前の湊さんが口を動かしているけれど、耳が使い物にならなくて何も聞き取れない。


(っ………)


そのまま崩れ落ちる様にその場に倒れた私は、床に頭をぶつけて意識を失った。







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湊が紫苑を見つけた直後。



「ここにもう用はない。行くぞ」


OASISのビル4階では、左手に拳銃、腰に血だらけのナイフを括り付けた琥珀がてきぱきと指示を出していた。


「おらサイコパス、次は上の階だ。そいつは死んだからもう離してやれ」


サイコパス、いや航海の活躍により、4階にいたOASISはほとんど全員戦闘不能となっていた。


返り血を浴び、目が充血を通り越して真っ赤に変わってしまった航海は、


「了解です!行きましょう皆さん、ムラサキを探しに!」


と、またもや死んだOASISの首を締め続けていた手をふっと離し、意気揚々とスキップで移動し始めて。


「非常階段とかめんどいからよ、室内にある階段使おうぜ」


対角線上で大きく伸びをしながら言う壱に頷いた琥珀は、


「室内にある階段で上に行く。武器貯蔵庫で、新しい武器を手に入れるぞ」


と、仲間に呼びかけて自身も移動を始めた。