ママの手料理

「ゔ、っ………」


私を守るかのように両手を広げる彼の白い服が、一瞬で赤く染まる。


「ひっ、!」


余りの恐怖に最早叫び声も出ない。


「っ、…ぁ……!」


そのままそこに崩れ落ちたのは、先程私を逃がしてくれたはずのガンマだった。


「あ、ガンマ……!」


(何してるの、こんな所で何してるの…!)


先程、私を見送ってからずっと階下の様子を気にしていたのだろうか。


そうでないと、このタイミングで下に飛び降りて私を助けるなんて行為は出来ないはずだ。


「っ、大丈夫か……?」


「ガ、ガンマ様っ…!申し訳ございません、申し訳ございません!」


「やだ、何でっ……!?」


ガンマの絞り出す様な声と、発砲した男が土下座して叫ぶ声と、私の泣き声が混じり合う。


ガンマは怪我を負っていて、この際彼が敵か味方かなんてどうでも良かった。


彼が私の家族を殺したという事実は変わらないけれど、今こうして私の事を守ってくれたのも紛れもない事実だから。


「…駄目だ、逃げろ紫苑ちゃん…っ、」


その場に崩れ落ちていた彼は顔を上げ、焦点の合わない視線を揺らつかせながら私を捉えた。


「ねぇ、…撃たれてるっ、!」


一際赤く染まる彼の左胸に手を当てようとすると、ガンマが私の手を掴んで阻んでしまった。


彼の手についた大量の血が、私の両手に移動する。