ママの手料理

ガンマが何故心変わりしたか分からないけれど、今は彼を信じて逃げるしか残された道はない。


これが彼の計画の1つで、また捕まったらその時はその時だ。


でも今度は絶対に自分から死にたいなんて言わない、mirageが助けに来てくれるのを待つ。



だから、私の階段を駆け下りる足音を聞いていたガンマが、


「……金よりも命の方が大事だから、」


と、呟いていたのは知る由もなかった。




ガンマと別れて、少し時間が経った。


自分が何階に居たか分からないけれど、たかが8階建てだとこの建物を馬鹿にしていた自分を殴りたくなる。


(長いっ、…しかも足音響くし!)


階段の踊り場にたどり着くまでが長いし、何よりも普通に歩くだけで足音が壁に反響してうるさい。


これでは、OASISにすぐに気づかれてしまう。


(静かに、静かに……)


なるべく足音をたてないように、けれど急いで非常階段を降りていると。


「…おい、お前何してる?」


いきなり踊り場のドアが開き、これまた屈強な大柄の男性が姿を現した。


(やばい、)


ああ間違いない、これこそが幹部だ。


ドレッドヘアーに骸骨の柄の入ったタンクトップという、いかにも悪の象徴とも言える出で立ちに恐れ戦きながら、私は乾いた唇を開いた。