ママの手料理

「……そんな、私の家族を殺した人に言われても…」


それでも、この人は私の家族を殺した憎き敵だ。


私の口から「死にたい」という言葉を吐き出させ、泣かせ、地獄以上の苦しみを味わわせた張本人にこんな事を言われても、やはり信じられない。


震える私の声を聞き、しゃがんで私の腕の縄を解き続けるガンマが息を吐いたのが分かった。


「……俺は、自分の命で罪滅ぼしをするから。これがばれるのは時間の問題だ、あいつらは本気だから…ニュー達に殺されたくないなら今すぐ逃げて」


「え、?」


(自分の命で、罪滅ぼし…?)


彼が何を言っているのか分からず、一瞬眉をひそめる。


どういう意味か聞こうと思ったけれど、それよりも縄が解けたのが先だったようで。


「よし。…ほら、早く行きな!何かあったら俺に言われたって言って!」


トンッ、と肩を軽く押された私はそのまま階段を一目散に下り始めた。


最後にガンマの顔も見れず、許さない、や、ありがとうといった言葉も言えないまま。


(逃げなきゃ、ここから逃げないと…!)


地下駐車場から地上に出れば、OASISのビルの近くに銀ちゃんの乗った車があるはずだから助けを求める事が出来る。


(大丈夫、私ならできる…まだ死ねない、生き延びてみせるんだから…!)