ママの手料理

けれど伊織の言う通り、所詮は皆赤の他人。


“家族”というレッテルを貼っているから家族なだけで、そのレッテルはいつだって取り外し可能なのだ。


現に、伊織の様に。


どんなに家族というカタチに縋ってみた所で、私はいつだって1人なのだ。


その事実は不変であり、抗う事は出来ない。



押し黙ってしまった私に気付いたのか、伊織はふっと鼻で笑った。


そして、またギーッ…という音を立てながらどこかのドアを開き、私を押すようにして通らせる。


私をモノのように荒く扱われようと、もう何を言う気にもなれなかった。



「…ここに立て」


それから、どれ程歩いただろうか。


伊織に半ば蹴られるようにされながらまた違うドアのような所を通り抜けた私は、彼に言われた通り直立不動の姿勢をとった。


すると。


「“ガンマ”、お前に仕事だ」


伊織の声が聞こえると共に、私に付けられていた目隠しとさるぐつわが外されていった。


(…え?)


それまで思考回路が完全に停止していた私は、眩しすぎる視界に慣れようと目を細めながら辺りを見回した。


ここはどうやら会議室のような場所で、円形に置かれた机やホワイトボードがあるのが分かる。


そんな私の横に立っているのは伊織で、怖くて目も合わせることが出来ない。